剣先に見ているもの

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氏名 江島 千陽(えじま かずはる)
所属 大阪府警
段位 七段
出身地 佐賀県
出身校 鹿屋体育大学
得意技 小手
構え 中段
大阪府警察に所属する警察官。術科指導者としての任務を担う。
日々、警察官を鍛え上げる立場であるが、自らの鍛錬を欠かさず、大阪府代表選手となり、成年男子の国体に挑んだ。

第79回国民スポーツ大会の剣道競技会 成年男子の部

第79回国民スポーツ大会「わたSHIGA輝く国スポ2025」剣道競技成年男子の結果は、滋賀県が優勝した。江島の大阪府は、惜しくも3位という結果になった。

勝負を賭けた5分間

大阪府は2回戦から登場した。

2回戦の相手は群馬県。
中堅として出場した江島は、面と小手の2本を決めて勝利。
鮮やかな剣道は会場を魅了した。
チームも勝利し、3回戦へと進んだ。

Screenshot

3回戦の相手は広島。
この試合の江島は2本の面を決めて勝利に貢献し、4回戦へと進む。

4回戦の相手は北海道。
この試合の江島は、胴を決めて一本勝ち、勝利に貢献して準決勝へと進む。

準決勝の相手は東京都。
ピリピリとする雰囲気の中、ライバル東京都と対峙した。
先鋒小畔選手、次鋒清家選手が2名とも引き分けで、中堅江島にバトンが渡った。
剣道団体戦における駆け引きとして、ここで考えられる戦法は2つ。
無理せず、引き分け覚悟で副将、大将にバトンをつなぐか。
勝負をかけて勝ちにいくかであった。

結果、江島は面を先取され、そのまま逃げ切られて1本負けとなった。
その後の副将、大将も引き分けとなり、大阪府は準決勝で敗退した。

3位決定戦へと回った大阪府は、福岡県に勝利し、見事に3位となった。
この試合、江島は胴と面の2本を決めた。大阪府が決めた総本数3本の内、2本が江島だった。
この試合、大阪府を勝利に導いたのは、まぎれもなく江島だった。

剣先に見ているもの

試合後、江島に東京都戦での心境についてインタビューした。
前述のとおり、東京都戦で、先鋒、次鋒が引き分け、中堅江島に回ってきた場面、江島は何を考えたのだろうか?

江島は言う。

「一本とって、勝負を決めてやろうと思ってました。
確かに、後ろの選手も強いので、無理せずに引き分けを狙うこともセオリーなのかもしれません。
色々と考えましたが、あの時は、勝ちに行くことを決めて試合に入りました。」

では、何故、その心境に至ったのか?

江島は真剣な表情で答えた。

「私は日頃から、署員に、刃物を持った凶悪な犯人に対して、身を守るための剣道を指導しています。つまり、署員の命、大阪府民の命を守るための剣道です。
自分の技術や目先の勝利にこだわるだけではなく、署員の命、大阪府民の命を守るための剣道なのです。
私が、逃げる(引き分けを狙う)という選択をしていては、署員や大阪府民を守れません。私が構えた背後には、大阪府民がいると思っています。
たとえ、私が切られて負けても、署員や大阪府民を守る盾となれるように、逃げる試合はしてはいけないと思っています。
剣道は奥深いので、様々な場面で、試合展開は変わってきますが、この度の国体は大阪府警代表、大阪府代表として来ていていましたので、東京都戦の場面は、試合に入る前に、私の剣道すると決めて戦いました。」

私は江島の答えに驚いた。
勝ちに行く理由が、背負っている署員、大阪府民であるという理由であった。
剣道は「心、技、体」の全てのバランスが重要であると言われるが、まさに「心」の部分で、江島の剣道は突出していた。

また、初戦で、面を決めた技について話を聞いたところ、

「あれは私の得意技なんです。小手と見せかけて間合いを詰めて、瞬時に面を打つんです。若い時はもっと足がバーンと出たんですが、今は、タイミングに集中してます。」

と笑って答えた。

年齢と共に体力は衰えていくが、年齢を重ねるからこそ生み出される技術もある。

江島が剣先に見ているもの。
それは、凡人の想像の域を遥かに超えていた。

「大阪府民を守る」という使命。

まだまだ進化し続けている江島から今後も目が離せない。

mollyのプロフィール
この記事を書いた人
morino0025@gmail.com

大阪市在住のスポーツライターです。
スポーツで目標に向かって取り組むアスリートをピックアップし、モチベーションとなるような記事を作成していきます。
スポーツ経験は「ラグビー」、趣味は「ボディメイク」
主に作成するスポーツ記事は、サッカー、ラグビー等のチームスポーツです。

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