機動隊員、そしてラガーマン。大阪府警ラグビー部の知られざる5つの顔

ラグビー

フィールドの上の「おまわりさん」

屈強な肉体をぶつけ合い、驚異的なスピードでフィールドを駆け抜けるラガーマン。その姿は、多くのファンを魅了するプロフェッショナルなアスリートそのものです。一方、厳しい規律のもと、市民の安全を守るために日夜任務に励む機動隊員。この二つの顔が一人の人間に宿るとしたら、一体どんなチームが生まれるのでしょうか。

その答えが、ここ大阪にあります。「大阪府警察ラグビー部」。彼らはラグビー選手であると同時に、現役の警察官です。この記事では、私たちが普段目にする試合の姿だけでは決して分からない、この特異なチームが持つ5つの驚くべき顔を、その背景にある物語とともに解き明かしていきます。彼らの強さの秘密、そしてフィールドの外でのもう一つの「戦い」とは。あなたがまだ知らない「おまわりさん」たちの真の姿が、ここにあります。

選手は全員、現役の第一機動隊員

大阪府警ラグビー部の最大の特徴は、その構成員にあります。在籍する選手は全員が、大阪府警察の第一機動隊に所属する現役の隊員です。プロ契約の選手や外国人選手は一人もいません。彼らにとってラグビーは単なるクラブ活動ではなく、警察官としてのアイデンティティと不可分に結びついた「任務」の一部なのです。

大久保洋志監督は、チームの哲学をこう語ります。それは、単に試合に勝つことだけを目指すのではない、彼らが背負うものの大きさを物語っています。

私は強い警察官の象徴にならなあかんと常日頃言っています。大阪府民の方から頼りがあるな、強そうやなっていうような思われるようなチームになろうと。

日々の厳しい職務とトレーニングを両立させながら、彼らは「強い警察官」の象徴として、グラウンドに立ち続けているのです。

恵まれた環境ではない。「手弁当」で強くなる逆説

男子セブンズ日本代表選手を輩出するほどの強豪でありながら、その活動環境は決して恵まれているわけではありません。企業チームのように潤沢な予算や最新鋭の設備があるわけではなく、その運営は極めて質素です。大久保監督はチームの現状を次のように表現します。

少ない部員で手弁当でやってるようなチーム

しかし、この逆境こそが彼らの強さを育む土壌となっています。7人制ラグビーの舞台では、その力が遺憾なく発揮されました。2025年の「関西セブンズフェスティバル」では、ライバルの中部電力を決勝で42-7と圧倒し、大会史上初となる2連覇を達成しています。

一方、シーズンを通して戦う15人制のトップウェストAリーグでは、同じライバルを相手に厳しい戦いを強いられています。2024年11月16日の対戦では12-27で敗北。試合後、監督が「力負けです」、キャプテンが「完敗です」と認めるほど、力の差を見せつけられました。一つのフォーマットで輝かしい功績を収めながら、もう一方では苦杯をなめる。このコントラストこそが、限られた資源の中で戦い続ける彼らのリアルな姿であり、その不屈の精神をより一層際立たせているのです。

秘密兵器は「ない」から生まれた練習法

リソースの制約は、彼らに独自の進化を促しました。「ラグビーリパブリック」の記事によると、7人制大会前の練習では選手がなかなか集まらず、通常の7人対7人の実戦形式の練習ができないことも珍しくなかったといいます。普通なら致命的なこの状況を、彼らは逆転の発想で乗り越えました。

その解決策とは、グラウンドの横幅は正規のまま、5人対5人で練習を行うというものでした。人数が少ない分、一人ひとりがカバーしなければならないスペースは格段に広がり、必然的により多くの運動量が求められます。この「ない」から生まれた練習法が、結果的にチームの最大の武器を磨き上げました。廣田瞬キャプテンが語るように、この過酷な練習が試合で「より強いディフェンス」を生み出す源泉となったのです。

原点は「素人集団」。4年で全国の強豪へ

今でこそ関西を代表する強豪として知られる大阪府警ラグビー部ですが、その出発点は驚くべきものでした。歴史を紐解くと、チームが創設されたのは1953年。機動隊にあったアメリカンフットボール部がラグビー部に改編されたのが始まりで、当時は「全くの素人集団」だったと記録されています。

しかし、創部からわずか4年後の1957年シーズン、ラグビー界に衝撃が走ります。東京遠征で前年の大学王者だった明治大学を破る金星を挙げると、その勢いのまま全国社会人大会に初出場。スター軍団を擁する大映をも破る快進撃を続け、いきなり準決勝(ベスト4)進出という鮮烈なデビューを飾ったのです。無名の素人集団が、並みいる強豪を打ち破り、一躍全国にその名を轟かせた瞬間でした。機動隊員としての規律と、限られた環境で工夫を凝らす「手弁当」の精神は、この創部当初の快進撃から続く、チームのDNAそのものなのかもしれません。

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彼らがタックルするのは、相手選手と社会の課題

彼らの戦うフィールドは、ラグビー場だけにとどまりません。警察官として、地域社会への貢献も重要な使命です。その象徴的な活動が「スクラム組んで非行防止」と題した、中学生向けのラグビー教室です。

この活動の目的は、単にラグビーの技術を教えることではありません。ラグビーを通じて、チームワークに不可欠な「声かけ」の重要性や、相手を尊重する「思いやりの気持ち」を育むこと。それによって、未来を担う少年たちの非行防止につなげようという狙いがあります。この取り組みは、参加した中学生の心に確かな光を灯しています。ある生徒が語った言葉は、この活動の成果を何よりも雄弁に物語っています。

警察ってかっこいいから僕もかっこいいくて優しいになりたいです。

彼らは屈強なタックルで相手選手の突進を止めると同時に、温かい心で社会の課題にもタックルしているのです。

地域との連携強化と地域貢献活動の展開

地域との連携強化と地域貢献活動は、特に大阪府警と関西地域において重要なテーマです。現在、大阪市では、地域の安全を守るために警察官が一丸となって活動しています。地域との協力は、単なる治安維持だけでなく、地域社会全体の経済や文化に貢献する要素も含まれます。 例えば、日本代表ラグビー選手たちは、地域イベントに参加することで、ラグビーフットボールが持つチームワークや協力の精神を広めています。彼らの活躍は、地域の子どもたちに夢を与えるとともに、支援を受ける側もまた参加することで地域貢献が促進されます。 また、大阪府警では、地域の情報を活用した防犯活動も多く展開されています。各種メニューやサービスを通じて、市民とのコミュニケーションを図ることができ、各地域に特化した支援が実現可能です。これからも、地域との連携を強化し、より良い社会の形成に貢献していくことが期待されます。
https://www.sankei.com/article/20160814-LWYSCMBPOBLXVENHMQ6JAFGKTY/

大阪府警ラグビー部の過去の試合成績

大阪府警ラグビー部の過去の戦績についてですね。輝かしい歴史を持つチームなので、主な成績と最近の動向についてご紹介します。

🏆 全国大会での活躍

大阪府警ラグビー部は、前身の大阪市警視庁時代から数えて1953年に創部され、全国社会人大会には1957年度から1997年度の間に30回出場しています。最高成績はベスト4が4回という記録を残しています。

特に注目すべきは以下の年です。

  • 1957年度:全国社会人大会でベスト4に進出。
  • 1959年度:全国社会人大会で再びベスト4入り。
  • 1975年度:全国社会人大会でベスト4入り。
  • 1989年度:第42回全国社会人大会で4度目のベスト4に進出しました。このシーズンは関西社会人リーグで同率5位でしたが、全国大会では横河電機や九州電力といった強豪を破り、準決勝では神戸製鋼に敗れるも素晴らしい成績を収めました。

🏅 関西リーグでの栄光

関西社会人リーグにおける大阪府警ラグビー部の主な功績は以下の通りです:

  • 1982年:関西社会人Aリーグで初優勝を飾りました。
  • 1983年:前年に続き、関西社会人Aリーグで2連覇を達成しました。

また、トップリーグ創設以降も下位リーグであるトップウェストAで5回の優勝を経験しています。

結論:彼らが守り、築くもの

彼らのジャージが象徴するのは、単なる一つのチームではありません。
それは市民を守る誓いと、逆境に挑む不屈の精神そのものです。
だからこそ、私たちがフィールドで彼らに声援を送る時、それは彼らが日々守り、築いている地域社会そのものへのエールなのかもしれません。

第一機動隊員としての顔。限られた環境で工夫する知恵。逆境から生まれた独自の練習法。素人集団からの驚異的な成長の歴史。そして、地域社会と未来を育む貢献活動。大阪府警察ラグビー部は、単なるアスリート集団ではありません。それは、市民としての義務、ラガーマンとしての情熱、そして地域社会の一員としての精神が融合した、他に類を見ない特別な存在です。

以上です。
ご一読ありがとうございました。

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mollyのプロフィール
この記事を書いた人
morino0025@gmail.com

大阪市在住のスポーツライターです。
スポーツで目標に向かって取り組むアスリートをピックアップし、モチベーションとなるような記事を作成していきます。
スポーツ経験は「ラグビー」、趣味は「ボディメイク」
主に作成するスポーツ記事は、サッカー、ラグビー等のチームスポーツです。

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