子どものスポーツ、その常識は間違いかも?専門家が伝えたい5つの意外な真実

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はじめに:わが子の可能性を信じる、すべての保護者の方へ

わが子がスポーツを通じてたくましく成長し、将来はトップアスリートに…そんな夢や期待を抱くのは、保護者として自然なことです。しかし、その成功を願うあまり、良かれと思って実践していることが、実は最新のスポーツ科学や発達心理学の観点から見ると、子どもの可能性を狭めてしまうことがあるとしたら、どうしますか?

広く信じられている「常識」の中には、時代遅れの考え方や誤解に基づいているものも少なくありません。この記事では、スポーツ科学と子どもの発達に関する専門的な知見をもとに、保護者や指導者の方々が知っておくべき「5つの意外な真実」を、わかりやすく解説します。子どもたちの健全な成長と長期的な成功をサポートするための、新しい視点を提供します。

「1万時間の法則」は、子どもの才能を潰すワナかもしれない

「一流になるには1万時間の練習が必要だ」という「1万時間の法則」は、非常に有名です。しかし、この法則を子どものスポーツにそのまま当てはめてしまうのは大きな間違いで、かえって才能を潰す「早期専門化」のプレッシャーにつながりかねません。

実際の研究データは、この法則に疑問を投げかけています。例えば、Joseph Baker氏とJean Cote氏による2003年の研究では、オーストラリアの代表レベルに達した選手たちは、エリートになるまでの平均13年間で、練習時間は約4000時間だったと報告されています。さらに、彼らが単一の競技に専門化したのは平均12歳頃からでした。

これは、特に成長期の子どもにとって、練習時間とスキル向上が単純に比例するわけではないことを示しています。

1つの競技に専念する練習時間と、スキル向上は比例しない

さらに、ロバート・M・マリーナ氏の調査によると、世界トップクラスが集う米NCAA(全米大学体育協会)のディビジョンIに所属するアスリートのうち、幼少期から大学までたった一つの競技だけをプレーしてきた選手は、わずか17%しかいませんでした。

練習時間だけに固執することは、燃え尽き症候群やケガのリスクを高めるだけでなく、多様な運動経験から得られる貴重な学びの機会を奪ってしまう可能性があるのです。

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ひとつの競技に絞る「早期専門化」がもたらす3つの深刻なリスク

特定のスポーツで成功するために、幼い頃から一つの競技に専念させる「早期専門化」。しかし、このアプローチには科学的に指摘されている3つの深刻なリスクが伴います。

  • ケガ(INJURY)のリスク 子どもの身体は、大人のミニチュアではありません。骨の末端には「成長軟骨」という柔らかく傷つきやすい部分が存在します。一つの競技に特化すると、同じ動作を繰り返し行うため、この成長軟骨に過度なストレスがかかり、スポーツ障害を引き起こしやすくなります。特に、身長が急激に伸びる「成長スパート」の時期は、骨の成長に筋肉や腱の成長が追いつかず、身体がアンバランスな状態になり、ケガのリスクはさらに高まります。
  • 燃え尽き症候群(BURNOUT)のリスク 同じ環境で、同じ練習を延々と繰り返すことは、子どもにとって大きな心身の過負荷となります。勝利至上主義のプレッシャーや過度な練習は、スポーツを楽しむ気持ちを奪い、情熱を失わせる「燃え尽き症候群」の原因となります。その結果、有望だった子どもがスポーツそのものを嫌いになってしまうケースは少なくありません。
  • 運動能力(SKILLS)の偏り 一つの競技に特化すると、その競技で使われる特定の動きばかりが発達し、運動能力に偏りが生じます。幼少期は順調でも、より複雑で多様な動きが求められるステージに達したときに、成長が頭打ちになってしまう傾向があります。

野球の大谷翔平選手(水泳、バドミントンも経験)やバスケットボールの八村塁選手(野球も経験)など、日本を代表する多くのアスリートが、子どもの頃に複数のスポーツを経験していたことは、決して偶然ではないのです。

ただし、「マルチスポーツ」という言葉の意味を誤解してはいけません。「複数のスポーツを経験させるべき」という理論は、海外のように季節ごとに競技を変える「シーズン制」が前提であり、いくつものスポーツを同時並行でやらせることではありません。もし複数のスポーツを同時に高い負荷で行わせると、心身への負担は倍増し、ケガのリスクも高まります。これでは本末転倒です。

将来どんな道に進むにも、最強の「はじめの一歩」となる習い事がある

早期専門化のリスクを避け、子どもの運動能力の土台を築くためには、どのようなアプローチが理想的なのでしょうか。その答えは、特定の競技スキルを磨く前に、あらゆるスポーツに応用可能な「体を操る能力」を養うことにあります。

そのために、専門家が特におすすめするのが体操(Gymnastics)です。 体操の最大のメリットは、「自分の思った通りに体を動かせるようになる」能力が身につくことです。逆さになったり、回転したりといった非日常的な動きを通じて、自分の体の各部分がどう動くかを感覚的に理解できるようになります。この能力は、サッカーで狙った場所にボールを蹴ったり、バスケットボールで複雑なステップを踏んだりする際に直接的に活かされ、あらゆるスポーツのパフォーマンス向上につながります。

元オリンピック体操選手の岡部紗季子氏が語るように、この関係性は非常に重要です。

体操選手だから運動神経が良いわけではなく、体操をするから運動神経が良くなると思っています。

また、水泳(Swimming)も全身の基礎体力を養い、水の中という「非日常」の環境を経験する上で非常に優れた選択肢です。

そして、最も重要で自然なスポーツは「遊び」です。走る、跳ぶ、投げるといった基本的な動作は、特定の指導を受けるよりも、公園などで自由に体を動かす遊びの中でこそ、最も効果的に習得されます。スポーツの習い事を始める前に、まずは存分に遊ぶ時間を確保することが、子どもの健全な発達の基礎となります。

「炭水化物は太る」は誤解。子どもの成長を妨げる本当の”敵”とは?

「炭水化物(糖質)は太るから、ご飯は控えめに」という考えは、特にスポーツをする子どもにとっては危険な誤解です。活発に動く子どもにとって、糖質は車でいうガソリンの役割を果たす最も重要なエネルギー源です。

そもそも「ご飯=太る」というイメージは本当でしょうか。データで比較すると、豚ロース100gは、ご飯100gに比べてカロリーは約2倍、脂質は実に76倍にもなります。体重増加の主な原因は、適切に消費される糖質ではなく、過剰に摂取された脂質(Fat)なのです。

成長期の子どもの身体では、摂取したエネルギーが使われる優先順位が決まっています。

  1. 生命維持のためのエネルギー
  2. 成長のためのエネルギー
  3. 運動のためのエネルギー

もし食事量が足りないと、本来「成長」に使われるべきエネルギーが「運動」のために回されてしまい、子どもの発育・発達が妨げられる危険性があります。これは「スポーツにおける相対的エネルギー不足(REDs)」と呼ばれ、近年、ジュニアアスリートの間で深刻な問題となっています。特に、時間がないからと朝食を抜くことは、エネルギー不足を招く非常にリスクの高い行為です。子どもの成長を守るため、まずはバランスの取れた3度の食事、特に主食である炭水化物をしっかり摂ることの重要性を再認識する必要があります。
そして、私はタンパク質の補給、プロテインの摂取を勧めます。
骨、筋肉を作るプロテインを飲まないという選択肢はありません。
ジュニアプロテインや、ゴールドジムのプロテインは良質ですのでお勧めです。

スポーツは「勝ち負け」だけではない。将来に生きる「心の育て方」

子どものスポーツの目的は、単に試合に勝つことや、プロ選手を育成することだけではありません。むしろ、その過程で得られる「心の成長」こそが、子どもの将来にとって最も価値のある財産となります。

複数のスポーツ(マルチスポーツ)を経験することは、そのための絶好の機会です。異なるルール、異なる指導者、異なるチームメイトと関わる中で、子どもたちは多様な価値観に触れ、柔軟な思考力を養います。

「色んな考え方を持って良いんだ」「たくさん違うことを経験して良いんだ」「途中で選択(考え方)を変えてもいいんだ」

このような経験は、一つの考え方に固執せず、変化に対応できるしなやかな心を育てます。

また、空手や柔道などの武道(Martial Arts)も、心の教育において非常に高く評価されています。武道を通じて子どもたちは、礼儀作法、他者への尊敬、そして困難に立ち向かう精神力を学びます。

どのような習い事であれ、新しいスキルを習得する過程で得られる自己肯定感、目標達成のために求められる集中力、そして仲間と協力する中で育まれる社会性など、スポーツ活動は子どものメンタルヘルスと非認知能力を総合的に高めるための、最高の学びの場となるのです。

まとめ:わが子のために、今日からできること

子どものスポーツにおいて、早期から一つの競技に特化させ、膨大な時間を練習に費やすという従来のアプローチは、必ずしも最善ではありません。むしろ、多様な運動を楽しみながら、心と体のバランスの取れた発達を促すことが、子どもの長期的な成功と幸福につながります。

今日から、少しだけ視点を変えてみませんか?

「どうすればこの試合に勝てるか?」と問う前に、一度だけ「このスポーツを通して、わが子はどう成長できるだろう?」と考えてみませんか。その問いの先に、子どもの真の可能性を最大限に引き出すヒントが隠されているはずです。
子供にとって、親は最高のコーチです。子供に問いかけながら、目標到達まで導きましょう。

以上です。
ご一読ありがとうございました。

mollyのプロフィール
この記事を書いた人
morino0025@gmail.com

大阪市在住のスポーツライターです。
スポーツで目標に向かって取り組むアスリートをピックアップし、モチベーションとなるような記事を作成していきます。
スポーツ経験は「ラグビー」、趣味は「ボディメイク」
主に作成するスポーツ記事は、サッカー、ラグビー等のチームスポーツです。

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